出所祝い

 東京から来た人がこんなことを言っていた。

「大阪はやくざが多いんですね」

 「なんで?」

「だって、地下鉄のドアーにまで”指詰め注意”って書いてあるでしょう」

 そういえば、先日、居酒屋でそれらしい人たちと相席になった。

 「ビール5本!」と左手を挙げると、店員は4本持ってきた。

「なんでや!5本言うたやないか!」 店内は煩くてよく聞こえない。

「だって、お客さん指が----?]

 この男、地下鉄のドアーで詰めたわけじゃないが、4本しか指がない。

男は照れて、 ”ビール5本! 広げた手には 指4本” と詠んだ。

これに、相席の俺は即座に反応、 ”爪を切る 必要のない 指4本”と返し、「1本足りない分です」と、1本差しだすと、いつの間にやら仲間内。一緒に出所祝いをするはめに。

 話はおのずと中の話に。 中では川柳が流行っているらしい。

    ”危ないよ 弾丸(たま)が来たら 避けようね”

 これは抗争中の組員の句。

    “悪い人 周りは言うが その通り”

    ”背中(せな)で哭く 昔、唐獅子 今はチン”

 当然ながら中にいるのは犯罪者ばかり。

  しからば君に問う!犯罪とは何ぞや!

 

     ”犯罪とは、国家の暴力独占性を

        食い破ろうとする 存在である”  

            

               ドイツの詩人 ENNTUENN-BERUTO

 

 

]