韓日民間外交

 対馬が見える。

振り返れば釜山の街並み。

出航してから30分、凍える風に栗色の髪をなびかせ、女は想う。

 ”皇国之興廃この一戦にあり”

かって祖国の存亡をかけ、若き日本の兵士はこの海に戦い、そして散った。

故郷の山河を、年老いた父母を、まだ幼き弟を、妹を、そして同胞を護

らんと。

 女は想う。

 ”祖国の興廃は我にあり”

韓日の関係は今、捩れに捩れ最悪の状態にある。

やむに已まれぬ女伊達、女は敢然と立ちあがり、いま日本へ向かう。

 

 女は在日韓国人の男を頼って大阪へ来た。

男は足を引きずるように歩く。プールでリハビリをしているらしい。25mは泳げるがターンはできないという。

日本語のできない私に手を取り足を取り、尻をなでなで親切に教えてくれる。

 片言の日本語を話せるようになった頃、韓日友好親善にピッタリの男がいると紹介された。

男は苦み走ったいい男だった。

その男はいった。「日韓友好は、もはや民間外交しかない、一肌脱ぎましょう。」

男の行動は早かった。その夜早速一肌脱いだ。というか脱がされた。

 新型コロナウイルスが猛威を振るっている。使命遂行のためとはいえ濃厚接触だけは避けたかったが、男の魅力の前には使命感などマスク、手洗い程の効力もなかった。

 

 「え~っ?うそ~?なんじゃコリアン⁉」

男は言い訳がましく言った。

  ”国の始まりが大和の国ならば”

  ”世界の始まりはアダムとイブ”

  ”男と女の始まりはアダルとビデオ”

 男はアダルとビデオで元気になった。使命感に燃えた女は在日の男に教わった日本語で愛をささやく。

[わたしゃあんたに惚れたとよ,いのちもいらんなまえもいらん、わたしゃあんたのOOOがほしかとよ」

女は祖国の危機を救わんと韓日友好の使命感に我が身を燃やす。

一方男は、”棚ぼた、ラッキー、サインはV"と モチベーションの差は歴然。男はたちまち悲鳴をあげる。 「逝く~、逝く~」

女はなぜか朝鮮漬を母国語で叫ぶ。

           「キムチ~」